ジャズ同好会 2026年3月10日
48年目のカリフォルニア・シャワー

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「かつしかシンフォニーヒルズ」での公演から一ヶ月。あの日、2026年3月10日、48年の時を経て、ライブで聴く「貞夫さん」のアルトサックス。美しいという言葉でも語り尽くせない……あのサウンドが、今もなお私の耳の奥で鳴り続けています。

今から48年前、私がサックスプレイヤーとしての人生を歩み始めた1978年。そう、今日「アート森」として活動している私の原点は、まさにあの年にあります。

当時、渡辺貞夫さんの『California Shower』は空前のヒットを記録していました。
貞夫さんはCMに出演し、ラジオ番組にレギュラー出演、そして武道館ライブ……。日本中がその明るく爽快なサウンドに酔いしれていた時代です。サックスを手にしたばかりの若き日の私は、貞夫さんのプレイ、サウンドに憧れながら、「自分もいつか……」と思う自分と、「そんなことできるわけない……」という自分が同居しながら、聴きまくっていたものでした。

【93歳の「今」が放つ光】 あれから48年。目の前のステージに立つ貞夫さんは93歳。しかし、そのアルトサックスから放たれる一音は、何とも深く、「アルトサックスとは、こういう音を聞かせてくれるものなのか」と、深く心に染み入るものでありました。

ピアニストの小野塚晃さんをはじめとする素晴らしい共演者たちと繰り広げられるアンサンブルは、世代を超えて、時代を超えて、メンバーが一体となって最高のサウンドを、ステージを作り上げることの一点に集中したことで生まれる、至高の対話がそこにありました。若手ミュージシャンを導く貞夫さんの温かな眼差しと、それに応えるメンバーの敬愛に満ちた熱演。そこには、48年前に私が感じた「音楽への純粋な憧れ」が、今もなお形を変えて、しかし変わらぬ熱量で息づいているのを感じずにはいられませんでした。

公演から一ヶ月経った今、あの3月10日の午後を振り返り、改めて確信していることがあります。 音楽という旅路に終わりはなく、一生をかけて歩むにふさわしい、豊かで広大な大陸であるということです。そして渡辺貞夫さんは、今もその最前線を、誰よりも力強く、瑞々しい音色で歩み続けておられる。

「生涯現役」という言葉を安易に使うことが憚られるほど、その音霊(おとだま)と佇まいは神々しく、私の胸を打ちました。48年前にサックスを手にしたあの日の自分に、そして今もなお「難曲大陸」に挑み続ける現在の私に、貞夫さんはあの一音で最高の答えを示してくださいました。あの日、葛飾の空の下で受け取った「最高のシャワー」を心の糧に、私もまた自分自身のサックス人生を、一歩ずつ真摯に刻んでいこうと決意を新たにしています。

渡辺貞夫さん、素晴らしい時間を本当にありがとうございました。

なお、当日はジャズ同好会から寺尾さん、山田さん、國安さん、森の計4名のメンバーが参加しました。

以 上(森慶一郎 1471)

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