粋山会5月定例山行
秘境大杉谷から百名山大台ヶ原山へ

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5月定例会は12、13の両日、日本三大峡谷の一つで、文字どおり秘境、大杉谷を歩きました。1日に1,000mmの雨が降ることもある、日本で一、二を争う湿潤多雨なエリアです。が、さいわいにも出発前日の雨も少なく、初日はうっすら陽の差すこともある好天。翌日は見事な晴天となりました。沢沿いの岩を歩きますから湿っているとちょっと不安なところでした。

メンバー築地、柳瀬、正田、立石、古屋、並河(記録)
特別参加者今井久仁子 氏
行程5月12日11:23 大杉谷登山口 
➡ 11:37 大日嵓 
➡ 11:48 大日嵓吊橋 
➡ 12:01 能谷吊橋 
➡ 12:03 能谷川原 
➡ 12:19 地獄谷吊橋 
➡ 12:28 無人雨量計 
➡ 12:48 京良谷 
➡ 12:53 京良谷出合 
➡ 13:14 日浦杉吊橋 
➡ 13:28 水越谷出合 
➡ 13:41 千尋滝前休憩所 
➡ 14:58 シシ淵 
➡ 15:22 ニコニコ滝正面展望 
➡ 15:35 ニコニコ滝休憩所 
➡ 15:46 平等嵓吊橋 
➡ 15:50 平等嵓 
➡ 15:55 平等嵓対岸急ガレ場 
➡ 16:13 加茂助吊橋 
➡ 16:16 加茂助橋上休憩所 
➡ 16:31 不動谷出合 
➡ 16:35 大台林道分岐 
➡ 16:40 桃ノ木小屋
行程5月13日5:35 桃ノ木小屋 
➡ 5:52 無名の嵓と大渓谷 
➡ 6:00 七ツ釜下・美小滝 
➡ 6:09 七ツ釜滝休憩所 
➡ 6:45 七ツ釜滝 
➡ 7:27 庄野ヶ浜 
➡ 7:42 光滝 
➡ 8:32 堂倉滝 
➡ 10:18 堂倉避難小屋 
➡ 11:53 しゃくなげ平 
➡ 12:35 大台ヶ原山(日出ヶ岳) 
➡ 14:19 展望台分岐 
➡ 14:44 大台ケ原ビジターセンター

(堂倉避難小屋〜山頂までお昼の用意に並河は先に歩いたのでタイムは参考)

さて大杉谷は紀伊半島のど真ん中、遠いです。関東出発のメンバーは東京駅を6時15分に出発し、名古屋で南紀1号に乗り換え、三重県大台町の三瀬谷に9時47分に着きました。そこからジャンボタクシーに揺られること約1時間。車は宮川沿いをどんどん山の奥深くに進んで行き宮川第三発電所近くの登山口に11頃到着。道中宮川では多くの鮎釣り客の姿がありました。すこし小腹に入れ、出発準備を整えて11半すこし前に出発。

歩きはじめると、いきなり切り立った狭い岩場を歩くことになります。崖っ縁で川は遙か下に見えます。落ちたら怪我ではすみません。緊張を強いられるところです。要所にある鎖で安全を確保しながら進みます。こういう場面が何度も繰り返しあらわれます。

大小の滝や深い淵が点在していて見所満載です。大杉谷全体には140を超える滝があるそうです。水量のある滝は山から噴き出すようにも見え、岩を叩く轟音が渓谷を振動させていますが、その背後に静寂の充満も感じられます。厳かな気持ちになります。岩の大きさも尋常ではありません。

日本にこんな自然があることを多くの人に知ってもらいたいところですが足を運べる人は限られます。見慣れぬ景観に接したということでは片付けられない、身に染み込むような景観がありました。そこに立った者にしかわからない感動があります。写真に写らないのが残念です。私たちはさいわいでした。

初日のハイライトはシシ淵でしょうか。狭く切り立った岩壁に挟まれた谷です。正面には巨大なニコニコ滝という由来不明な名の滝が見えています。ガイドブックなどにもよく取り上げられる絶景です。これを見られただけでも来た甲斐があったというものです。

その先も険しい道が続きますが、すこし慣れてきた感じです。シシ淵を後にして約1時間半で本日の宿泊地、桃の木小屋に到着です。山小屋ですが小さな檜風呂があります。3人で一杯になりますが、すこし熱めのお湯に浸かるとすこし疲れが取れたような気がしました。

小屋のビールの他、並河が4合瓶で、柳瀬さんはペットボトルに移して焼酎を持ってきたので、お風呂上がりに宴会。8時に消灯となりました。あしたは大台ヶ原山に登ります。

前日は7.7kmの山行でしたが、2日目、桃の木小屋から大台ヶ原山までは11km。高低差は1.2kmを歩かなければなりません。おまけにその登りのほとんどは、堂倉滝から30分くらい進んでから始まるので、かなりの急登に感じます。疲れた体には厳しいです。大台ヶ原から帰りのバスは16時発の1本だけ。乗り遅れるとたいへんです。それで些か早いのですが5時起き、5時半出発にしました。

2日目、前半は川の傍を歩いたり、前日のような崖の際を歩いたりする変化に富んだルートです。事故多発、とか死亡事故とか書かれた看板が多いです。そういう看板はないのですが、嵓(くら)と呼ばれる切り立った崖がバタンと倒れた崩壊地、がなかなか見物です。ものすごい塊だったようで、発破をかけて破砕して人が歩けるようになっていますが、破砕したといっても岩一個の大きさが尋常ではなく、崩壊直後はどんなだったろうと想像して唖然となります。

「歩ける」と書きましたが、ボルダリングの連続と考えてください。85歳の老人(失礼)のする事ではありません。

「爺ちゃん凄いね!」と孫にいわれそうなところを登ります。
この崩壊地の岩はずいぶん大きいですが、これでも発破をかけて砕いたものです。元々は岩山がそのまま倒れたようです。

その先、堂倉滝は落差が20mしかないのですが、滝壷の手前の淵まで降りることが出来ます。降りると滝が水面に落ちて風を巻き起こしています。強い風が吹いていて迫力がありました。

堂倉滝を過ぎてもしばらく崖があったりしますが、やがて森の登山道になって行きます。これまでと比べれば歩きやすいといえば歩きやすくなりますが、かなり厳しい登りです。危険なところはかなり少なくなりますが、過酷といっても言い過ぎではない気がします。山頂直前は延々と階段が続く感じでヘトヘトに。でも、しゃくなげが咲き、空は青く、山頂にはお昼の用意があると思うと頑張れたのではないでしょうか?並河は今井さんと先に山頂に駆け上がり、サンドイッチとコーヒーを用意してみなさんをお待ちしました。すこし落ち着いたところで、大台ヶ原の駐車場に移動しビールで乾杯。いやあ、楽しかったです。

16時発のバスに乗って予定より早く18時半頃、橿原神宮前に到着。一本速い特急に乗って京都駅に着いたのが20時頃。みなさんそこから新幹線で帰京されました。

粋山会会員ではないのですが、並河の登山仲間の女性今井さんが参加されました。粋山会発足以来20年、初めて山行に女性が同行したということでした。「とても楽しかったです。ありがとうございます。厚かましくてすみません。」とおっしゃっていました。この二日間、ちょっとドキドキするところもあった、という声がありましたが、ドキドキをワクワクに変えて歩きました。素晴らしい二日間でした。

以 上(並河秀憲)

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