第53回観劇会(歌舞伎同好会)

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日程2025年1月18日(土)
場所新国立劇場
演目新春歌舞伎公演「通し狂言 彦山権現誓助剣」
参加31名(会食21名)

正月18日、歌舞伎同好会はDF会員とご家族31名の参加を得て、新春歌舞伎観劇会を催しました。出し物は、新国立劇場での新春歌舞伎公演、「通し狂言 彦山権現誓助剣」でした。この狂言は1786年(天明6)初演の人形浄瑠璃をオリジナルとする時代物義太夫狂言です。第5幕の「毛谷村」が有名で、一幕のみ再演を重ねてきました。通し上演は貴重な機会で、国立劇場ならではの公演です。
(画像はクリックで拡大します)

武芸の達人で身の丈六尺で力持ちであるお園は、同時に心優しい乙女でもあります。非業の死を遂げた父吉岡一味斎の敵、京極内匠を討つため、母のお幸、妹お菊とその幼子と共に仇討ちの旅に出ます。苦難の旅で、妹を失い、幼子と生き別れになりますが、彦山権現の麓、毛谷村で父の定めた許嫁六助に巡り合います。六助は一味斎から奥儀を授けられた武芸の達人で、かつ心優しい青年です。

武芸に通じた女性の役柄を「女武道」と呼びます。お園はその代表的役柄ですが、家来の敵と闘い挑む六助の名乗りを聞いた途端、純情可憐な乙女に変身する妙が、この芝居の見所です。六助の助けを得て、母子は見事に本懐成就です。お園と六助のさわやかな人格造型で、仇討ちの悲惨さはなく、明るさのみ心に残るお芝居でした。お園を演じたのは、昨年襲名した若き時蔵、六助は5月に菊五郎襲名をする菊之助でした。大団円の場で、真柴久吉近侍の若侍に5人の小役の登場は、正月芝居の御趣向と拍手喝采でした。皆さん、テンポよく進む久しぶりの通し狂言に、ご満足されたことでしょう。

終演後はオペラシティビルの53階のレストラン「北海道」で21名のご参加を得て懇親会を持ちました。53階から夕陽をバックに映える富士のシュルエットを眺め、鍋を囲む楽しい時間を過ごしていただきました。(画像はクリックで拡大します)

歌舞伎知識の一助にと神村作成の「簡略歌舞伎史」を紹介しました。1600年から2023年までの歌舞伎の歴史をA4一枚に圧縮してみました。皆様のご関心を寄せていただきました。

次回は、5月17日2年振りに文楽観劇会を、北千住シアター1010 で催します。出し物は「芦屋道満大内鑑 葛の葉子別れの段他」です。昨年の正月観劇会で、同じ狂言の歌舞伎を観劇しました。安倍晴明の母は、実は晴明の父保名に命を助けられた白狐であったというお話です。真実が明らかになり、愛しい晴明との別れの時が来た母狐は、真っ白な障子に、「恋しくば 尋ねきてみよ いずみなる しのだのもりの うらみくずのは」と、晴明を抱えて、右手で、左手で、さらに口に筆を咥えて墨痕鮮やかに書きました。この至芸を演じたのは、梅枝、現時蔵でした。さて、文楽ではこの場面はどのように演出されるでしょうか。
文楽と歌舞伎の演出の違いを確かめる機会になるでしょう。多数の皆様の御参加をお願致します。

以上(神村安正)

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