第52回歌舞伎観劇会報告

  • LINEで送る

2024年9月21日(土)、19名の会員の参加を得て、国立劇場企画歌舞伎名作入門「夏祭浪花鑑 二幕三場」の観劇会を開催しました。劇場は新国立劇場中劇場で、二回目の観劇でした。空席が気になりましたが、イヤホンガイドと公演パンフレットのサービスに、片岡亀蔵の解説付きで満足でした。

「夏祭浪花鑑」は、1745年初演の全九段の人形浄瑠璃由来の「世話物」義太夫狂言です。作者は、並木千柳、竹田出雲、三好松落です。このトリオは翌年から立て続けにあの三大浄瑠璃・歌舞伎を世にだしました。歌舞伎・文楽には「時代物」と「世話物」とジャンルがあります。2023年3月以降、歌舞伎5回、文楽1回の観劇会は全て「時代物」でした。

「時代物」は江戸時代以前の世界で展開するドラマです。「世話」とは、「世間の話題」の意で、現代(当時)の世相にテーマを求めたドラマです。狂言作者達は、実際に起こった心中事件や殺人事件をヒントに芝居を仕立てることで、興行的に成功しました。今なら、さしずめ週刊誌と言う事でしょう。夏祭も実際に起こった事件を基にしているようです。

さて、狂言の主人公は、団七九郎兵衛、一寸徳兵衛、釣舟三婦の三人の奇妙な男たち、どうみても世のはみ出し者です。三人が一様にはく台詞が、「それじゃ、俺の男がたたない」です。男立て、男伊達への拘りです。男伊達とは、男の面目・面子が立つようにふるまう事、そのことを美学とする男という意味でしょうか。

「夏祭」は、男伊達を競う三人の男たちの、始めはカッコよく、やがて破局に至る悲劇と見ましたが如何でしょうか。「夏祭」の人気の源は、「長町裏の場」です。摂津は高津の宮の宵まつり、祭り囃子を背景に繰り広げられる、凄惨な、団七の舅義平次殺しの場です。命の恩人への義理と、悪党とは言え舅への人情との葛藤の極致でぶっきれた団七。白い肌に全身の紺色鮮やかな彫り物、真っ赤な下帯に対して、本物の泥にまみれた舅義平次、二人の立ち回りは歌舞伎の様式美に満ち満ちていました。

折から通りかかる神輿のはやしの声の明るさと、泥田の中の悲劇の対比が際立ちます。「悪い人でも舅は親、許して下んせ」と慌ただしく手を合わせた団七は、祭りの群れに紛れて逃げ去ります。
坂東彦三郎の団七、片岡亀蔵の義平次の見事な演技に拍手喝采でした。

今回は終演時間の事情で懇親会は持ちませんでしたが、有志の皆さんで、オペラシテイのパブで懇親の場がもたれました。
次回は、2025年1月18日(土)新国立劇場での公演を予定しています。多数の御参加をお待ちしております。

国立劇場歌舞伎情報サイトhttps://www.ntj.jac.go.jp/kabuki/

以上(神村安正)

  • LINEで送る