第51回歌舞伎観劇会報告

  • LINEで送る

7月6日、会員20名の参加を得て、国立劇場企画の「歌舞伎鑑賞教室」公演で歌舞伎観劇会を開催しました。「歌舞伎鑑賞教室」は歌舞伎の継承普及を目的としたすぐれた企画で毎年観劇会プログラムに組み入れてきました。今回も多くの中高生徒と一緒の観劇でした。

今回の出し物は、「義経千本桜」の四段目の切、「川連法眼館の場」でした。通称「狐忠信」と呼称されおなじみの出し物です。中村玉太郎の解説に、中村橋之助の狐忠信、同歌之助の義経、坂東新悟の静御前と若手揃いの舞台でした。

「義経千本桜は、いわゆる「判官贔屓」の集大成の義太夫狂言です。幼くして死に別れた両親を慕う源九郎狐の姿は、幼くして父と死に別れ、母と生き別れ、今、功成り名遂げても、親とも慕う兄頼朝に疎まれ、拒絶され、あまつさえ追われて吉野山中に逃れる義経の心情に重ねられ、当時のお客の涙を誘ったのでしょう。

半蔵門の国立劇場建て替えの間の代替会場での講演二回目で、会場はティアラこうとう(江東公会堂)に替わり、加えての猛暑日で御参加の皆さんには難儀をお掛けしました。講演会場が代替ということで、気になる点もありました。皆さんから、役者のせりふが聞こえないとのご指摘がありましたが、汎用ホールのため音響効果が不備だったのでしょう。また、花道が無いため、静の打つ鼓に誘われ、狐忠信が現われる時のトリックが楽しむことができませんでした。花道の奥で揚幕の金輪がチャリンと鳴るのに気を取られて首を回している間に、舞台正面の階段が回転して、狐忠信が現われるあの場面です。今度は騙されないぞと心しながら毎回騙されてしまうあの楽しみが無かったのです。歌舞伎は歌舞伎舞台の構造と共に進化してきました。フラットな客席、花道、回り舞台、せり、スッポンがない歌舞伎は歌舞伎じゃないのかもしれません。国立劇場の建て替えが待ち遠しく感じるところです。

終演後、錦糸町の過門香で15名のご参加を得て懇親会を持ちました。炎天下のバスでの移動で参加者には不便を掛けしましたが、楽しい時間を過ごすことができました。
次回は、9月21日、新国立劇場中劇場に会場を移し、歌舞伎観劇会を持ちます。出し物は、「夏祭浪花鑑」です。出演は、坂東彦三郎、亀蔵兄弟に片岡孝太郎。義太夫狂言「夏祭浪花鑑」は、大坂では超人気の出し物です。江戸の華とされる侠客の男伊達の元祖は上方にあったというお話です。「夏祭」と言えば、高津の宮の宵祭の囃子をバックに泥水まみれの舅殺しの場が有名です。今回、劇場が変わっても本物の水を使うそうです。
昨年来、時代物義太夫狂言が続きましたが、がらりと変わって「世話物狂言」の世界をお楽しみいただけます。多数の御参加をお待ちしています。

以上(神村安正)

  • LINEで送る